白い天井~恋愛依存症候群~
頭では、わかっている。

この場を収めるには、同情して、優しい言葉を並べてやればいいのだ、と。

ハルコの望むように、悲劇のヒロインとして憐れんでやれば、それで、いい。


こういうタイプの扱い方には、慣れているはずだった。

ハルコはやっぱり、ユウヤとどこか、似ているから。


「死ぬフリなんてね、動物だってできんのよ」


相手がユウヤなら、アタシは絶対、こんなことは言わない。
傷ついて手に負えなくなるのが目に見えるから。

でも、ハルコには、言わずにいられない。
どうしてか、口が滑り続ける。


「…………れ……」


わずかな合間を縫うように、虚ろな目で、ハルコが何かをひとりごちた。


「……まれ」


今度は、なんとか聞き取れる。


「黙れ!!」


アタシはようやく、それが自分に向けられたものだと気づいた。

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