白い天井~恋愛依存症候群~
ハルコだって多少の呵責はあっただろう。
それは、わかる。

でも、だからと言って、アタシには何の慰めにもなりはしなかった。


裏切られてできた傷口は、乾いた今も、消えることなく、疼いている。

代償を、求めてる。

それが、曲がりなりにも愛する男の求婚を受けた相手なら、なおのこと。


「………………う」


低い呻きが聞こえた……と思った、刹那。


「ぅあぁぁぁぁっ」


甲高い奇声とともに、青筋の浮いた拳が振り上げられたのが、目に映る。


鬼が……ハルコの皮を被って、近づいてくる。

恐ろしい形相で、目を血走らせて。


鋭く光る、切っ先が見え……。


「チサ!」


ガサガサに乾ききったユウヤの唇が、そう、動いて。


黒目まで見開かれたハルコの瞳が、緊迫感をアタシに与える。


あ……。


思ったまま、頭が凍った。

景色が遠のき、何もかもが、ピタリ、と固まる。


危ない…………


感じる余裕すら、奪われて。

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