白い天井~恋愛依存症候群~
ユウヤ、だ。


「……もしもし」


「今どこ~?」


今度は早口ではない、いつもの口調。
後ろの騒音も、ない。


「街、だけど……」

「ふ~ん。じゃ、あと20分はかかる?」


やっぱり話しが見えない。


「あ、チサさぁ、途中でビール買ってきてよ。忘れちゃってさ」


薄々、そんな気はしていたけれど。

……アタシが、行くの?
ユウヤの部屋に?
今から?


「ごめん…………アタシ、用事あるんだけど……」


待ち合わせまでは、あと20分。
どんな誤解があるのかわからないけれど、もう時間が、ない。

このややこしい話を万が一にも彼には聞かれたくなくて、アタシはカフェに入るのを一旦あきらめた。
店の見える、騒音の少ない路地を折れると、路上の壁に寄り添うように立ち、ソワソワと告げる。


「突然そんなこと言われたって、困るよ」
< 46 / 254 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop