白い天井~恋愛依存症候群~
奥から、酔っ払った男の声がする。

聞き覚えのある声ではない。
それでも、アタシは、気まずさのあまり自分の顔が赤くなるのを痛いほど感じた。


「ユウヤっ!イイから早く!」


一瞬見えた、驚いたような、それでいて無表情な顔が、まな裏に焼き付いて離れない。

ほんの、刹那だったのに。


今年は研究室の仲間と来ていたらしい。
アタシも顔を知っている数人に囲まれて、彼はいた。


別れを決めて以来、できるだけ会わなくて済むようにと、避け続けてきた、彼。

それが、こんなところで…………。



ユウヤの指に、ふいに、ギュッと力がこもった。
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