最後に初めまして。
過 去
「うっ……んんっ…」

『――…ぼる?登!起きて!大丈夫?』

「ん?――…ああッ。」

『大丈夫?すごくうなされていたわよ。』


「―…また同じ夢か。」

朝もやが、かかるような頭でふと窓を見つめた。

それはカーテン越でもすぐそれだと分かった。


「やはり雨か…。」

『えっ?何か言った?』

「いや…なんでもない。」

『ねぇ コーヒー飲むでしょう?今入れるわ。』

「ああ…頂くよ。美味しいのを頼むわ。」

『失礼ね。いつも美味しいでしょ?』

「あはは…そうだな。」


ベッドから起き上がった俺は、雨のBGMを消すかのように、テレビのスイッチを入れ、煙草に火を点ける。

気怠い休日の遅いコーヒーは、俺にとって特別な時間だった。

あの夢さえ見なければ、最高の一日の始まりなのに…。


『――…でね。ねぇ?話聞いてる?』

「―…ああ。聞いてるとも。」


独りでしゃべてるこの彼女は、薫(かおる)。
頭が良くてクールで冷静、彼氏有りで27歳O型。

俺達は世間で言うとこの大人の関係ってヤツだ。

薫の他にも夜を共に過ごす彼女は何人かいる。

そしてまた、彼女達もその事を知っているが絶対口にしない。

俺に求めてるのが、優しさや愛情と言った類のものとは、違うからなのであろう。
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