最後に初めまして。
考えれば考える程、腹の立つ話だ。

俺の青春は飲んだくれの母親に振回され続けたのだから。


「――…くそっ。」

『えっ?な、何?』

「ごめ…何でもない。」

『コイツね、昔から自分の世界に入る癖があるから、あまり気にしない方がいいよ。』


ヒロがすかさず口を挟んで来る。


『ふぅ~ん。変わってるのね。でも面白くて楽しそうじゃない?』


彼女は興味津津って言う様な顔して見つめて来た。


「何なら、俺だけ世界に入ってみる?君なら案内するけど。」

『ねぇ、それって誰にでも言ってるでしょ?』

「いや...今日は君が始めてだよ。」


こんな台詞が堂々と言えるなんて…

俺は最低のヤツだな。―
そう考えてたら何故だか急に笑えて来た。


「ぶっ、くっくっく...わっはっはは...。」


いきなり笑いだす俺をよそに周りは呆然としていた。


『本当に変な人ね。でも…その世界に入るのも悪くないかも?』


今夜のパートナーが決まった瞬間だった。

俺達4人は店を出て、それぞれ別の方向に歩き出していた。

俺は大通りでタクシーを拾い、ヒロともう一人の彼女が繁華街に消える後ろ姿を、タクシーの中で見送った。

俺はただ…――

彼女達との、ただ意味のない会話と意味のない優しさだけの時間が好きだった。
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