最後に初めまして。
フラれて遠くに行くならまだましだ。
思う事もまた出逢える事も、声を聞く事も出来るのだから…。

死んじまったら何も出来ないだろう。

俺は何をすればいいんだ何をすれば…。

死に行く古都を見送るのか?
日に日に弱って行く古都を見続けるのか?

そんなの俺に出来る訳ないだろう…。


ただ考え泣くしか出来ないなんて、何てちっぽけな人間なんだ。


泣きながら窓の方に目をやった。
外は雨が降っていた。

いつも嫌な事があると雨が降ってるな。

母親がいなくなった日も雨だったな…。


「お父さん…お母さんがいないよ。どこにいるの?」

『あの女はお前を捨てて逃げたんだよ。俺にこんなガキを押しつけやがってー、クソッ、コノッ。』

―― バシッ。ドカッ。――

「ごめんなさい…ごめんなさい、ごめんな…さい…。」


腫上がった顔して学校に行った。
雨が降る中、傘で顔を隠すように…。


母親が死んだ日も雨が降っていた。


『高瀬?母親が倒れたみたいだ。病院から連絡があった。』


駆け付けた時には緊急処置室の上に寝かされた母親の上に人が乗って心臓マッサージをしていた。

言いたい事は山程あったのにアイツは何も俺に言わず行きやがった…。

俺は言葉一つかけてやる事さえ出来なかった。


雨で嫌な事は全て流れてしまえばいいのに…。

だったらこんなに涙なんてきっと流さなくて済むのにな。
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