最後に初めまして。
俺はいつしか雨が嫌いになっていたのかも知れないな。

だから雨の日に変な夢を見るんだきっと。

何もかも忘れる事が出来たらいいのに…。
忘れたい何もかも。


そう思うと俺はじっとして居られなかった。

ヒロが持って来てくれた着替えから服を引きずり出して着替えた。

看護士達の目をかいくぐり病院の外でタクシーを捕まえ繁華街まで走らせ、俺はlonelyの扉を開けていた。

久し振りにここで飲むバーボンはいつもと変わらなかったが、俺の心は晴れなかった。

飲む量が増えるにしたがい腹の痛みも和らいでいた。


『今日は少し飲み方が違いますね。どうかしましたか?』


普段無口なマスターが口を開いたが俺はお構いなしにバーボンを口に運んでいた。

十何杯目かのバーボンを頼んだ時にヒロが顔色を変えて入って来た。


「何だ…お前も飲みに来たのか?」

―― バシッ。…ドタッ。――

俺の言葉でキレたのかいきなりヒロに殴られた。
雨の中を走って来たのかヒロは全身ビショ濡れになっていた。


『登。お前どう言うつもりなんだ。そんなに死にたいのか?』

「ああ…。死ねるものなら死にたいな。」


俺の本音だったかも知れないな。
古都がいなくなるぐらいなら死んだ方がマシだった。

またあの寂しくて忌まわしい過去に縛られるぐらいなら死んだ方が楽だと思う。

でもそんな勇気俺にはないのも確かだ。
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