最後に初めまして。
ヒロは俺の肩を抱き外に連れ出そうとしていたが俺は必死に抵抗していた。


「離せよ。まだ飲むんだから。関係ないだろ?」

『ほらっ立て、病院に帰るぞ。』


店内が騒然てしている中で事の重大さに気付いたマスターも手伝い俺は外に出された。


『何がお前をそうさせてるんだ?今のお前はおかしいぞ。』

「お前なんかに分かるはずもない…俺の事なんかほっといてくれ。」


――バシッ。バシッ。――


やるせない思いからかヒロの拳が俺を襲う。

こんな痛み心の痛みに比べれば平気だった。

何発殴られたか分からなかったがそこに古都が体ごと飛込んで来た。


『やめて!ヒロさんお願いだから…やめてよ。』

「どけっ。」


俺は古都を押し退けヒロの前に立ちはだかった。

何でもいいボロボロになりたかった。
そんな事をしても何一つ変わる事はないのは分かっていたがただ…ボロボロになりたい気分だった。


『まだ殴られ足りないのかお前は…。』

「殴れよ…頼む…もっと殴ってくれよ…。」


俺は泣きながらヒロの体にすがりつく様にしゃがみ込んでいった。

ヒロは俺の予想もしない行動にただ雨の中を立っていた。

古都は俺の背中を抱き包む様にかぶさり声を殺して泣いていた。

俺の泣き叫ぶ声と古都のすすり泣く声が雨の音にかき消されていた。
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