最後に初めまして。
もう残された時間はわずかしかない。

先日古都から電話を貰って入院をした事を知った。

古都は自分の痩せ細って行く姿を見せたくないと言っていたがその声は寂しく悲しい声だった。

もうあれから一週間はこんな生活をしている。

今日こそは返事を頂く。

ピンポン…ピンポン


『高瀬です。話を聞いて下さるまでここを動きませんから。』


― ポッ、ポッ… ザーザー―


「ツイてない雨か…。」


俺は長野の別荘の事や病院を抜け出した夜の事を思い出していた。

そうだ俺にとって雨は良い事の前触れじゃないか諦めるな。

3時間程経ってから玄関の扉が開き中から母親が俺を呼んでいた。

バスタオルを渡され拭いていると父親が現れ俺を応接間に呼んだ。


『君も本当にしつこい男だな。こんな事をしてもわしは変らんぞ。』

「何がいけないんでしょうか?教えて下さい。」


俺は最後の手段に出る事に決めた。


『そ、それは…駄目なもんは駄目なんだ。』

「もしかしたらお嬢さんが助かるかも知れないと言ってもですか?」

『なっ、何?どう言う意味かね?聞かせて貰うか。』

「僕の肺をお嬢さんに移植するんです。」

『何を言い出すかと思えばたわいもない事を。』


鼻で笑い飛ばされたがこれが俺の二つ目の決断だった。
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