最後に初めまして。
呆れ果てた顔をする父親を余所に俺は至って真剣だった。


「お嬢さんの病気、間質性肺炎は身内による移植でしか治せません。しかも体が弱く特殊な体質のお嬢さんは色々な理由でそれが困難だった。違いますか?」

『君に言われんでもわしはあらゆる手を尽くして来たんだ。』

「なら最後まで諦めずにわるあがきをしてみませんか?僕の中にはお嬢さんの血が流れてます。」

『血が流れてる?言ってる意味が分からんがな。』


俺は輸血の事を説明した。
そしてサイン済みの婚姻届と離婚届を父親に見せ付けた。


「最後の望みに賭けても無理な時はこれを出せば倉木家と僕は関係ありません。それでも許して頂けないでしょうか?」

『君は何故そこまでするのかね?』

「理由なんてありません。お嬢さんが僕にとって何よりも大切だからです。それだけです。」


俺の真直ぐに見つめる先の父親は目を潤ませゆっくりとうなずいた。

ドアの向うで聞いていた母親の泣き声が聞こえて来た。

でもこれで終わりじゃないんだ。
これからが始まりなんだから…。

だから俺はまだ泣くわけにはいかない。


「お父さんすぐ僕を病院に連れて行って下さい。お嬢さんの体力を考えると時間がないんです。」


大きくうなずいた父親は俺を乗せ車で病院に向った。

駐車場に着く車を降りて古都のいる病院に歩き出した。
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