最後に初めまして。
しばらく考えてから古都は口を開いた。


『私、登のお嫁さんになんてなれない。こんな体で…それにもうすぐ死んで行くのよ。』

「古都は俺に言ったよね?思い出を埋め尽くしてって…。でも、まだ足りないんだ。だからもっと古都と過ごしたい。」

『なら結婚しなくても出来るよ。』

「一緒になって色んな所に行くんだ。あの別荘にも…もう一度。俺の肺を古都にあげるから。」

『えっ!?』

「古都は俺が死にそうな時に輸血してくれた。今度は俺の番だろ?」

『そんなの無理よ。私の体は普通…――。』

「分かんないだろ?最後まで諦めるな!俺は諦めない。古都は俺と一緒に生きたくないのか?」

『…生きたい。死にたくなんてない。うっ…。』

「大丈夫だよ。なら後は俺に任せな。これでも頼りになるんだぜ。これ書いてお母さんにでも渡しといて。」

『…うっ…な…何?』

「俺達の婚姻届。さて先生のとこに行ってくるわ。待っててな。」


泣いている古都に優しくキスをして病室を出た時一人の看護士とぶつかった。


『きゃっ。あっ、ごめんなさい。』

「いえ、こちらこそすみません。」

『お、お兄ちゃん?』

「はぁ?」

『久実だよ。忘れたの?って私、小さかった分かんないよね。』


それは幼い時に離れ離れになった妹の久実(くみ)だった。

まさかこんな所で再会するとは夢にも思ってなかった。
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