最後に初めまして。
自宅に戻る頃には日付も変わる寸前だった。

部屋に入るとすぐに上着をソファーの上に投げ付け、ネクタイを緩めながらベッドに倒れこむ。


―― 疲れたッ。――

そう言えば…倉木って誰だったんだろう?

考えながら夢の中に引込まれそうになっていた時着信音が現実世界に俺を呼び戻す。

プルルル…プルルル…プルルル…

誰だ、こんな時間に…。

不機嫌そうに話出す。


「はい? ―…誰?」

『俺…ヒロ。悪い、もしかして寝てた?』

「いい加減にしろよな!お前今、何時だと思ってるだ?」

俺の機嫌の悪さに、ヒロも慌てて用件を切出して来た。


『ごめん…。ただ、あの女は止めとけって言おうと思ってよ。』

「女?…先週のか?お前に心配されるとは、俺も落ちぶれたもんだな。」


俺の言葉でヒロの口調が変わったのが分かった。


『茶化すなよ。髪と目の綺麗な…名前は、えっとなんだっけ?ほらっ。』


俺はすぐベッドから飛び起き、思わずこの名前が口から出ていた。


「――… 倉木?」

『おお―っ。それそれ、あの女はヤバいぞ。』


何故この名前がとっさに出て来たのか...。

頭の何処かに引っ掛かって取れなかったのか。

――…倉木。

いったい誰なんだ?

俺はもう一度頭の中の記憶を必死に手繰り寄せていた。
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