最後に初めまして。
ヒロの表現通り、胸の辺りまである綺麗なブラウン色の髪が印象的で、緩やかなウェーブが余計それを引立てる。

瞳の色も髪の色と同じでそれが日本人にはない特別な物であった。

華やか外見には似合わない、奥ゆかしさが漂っていて、品の良さがすぐに分かった。

周りの客もまるで、彼女の香りに気付いたかの様にざわめき始めた。


「で、君は誰?」

『あの…――。』


勢い良く駆込んで来た時とは、別人のように黙り込む。


『登。向こうで話したらどう?』


彼女の沈黙をかき消すようにヒロが促す。

俺は彼女を奥のボックスへと誘導した。

俯くままの彼女に痺れを切らした俺は、グラスに残ったバーボンを一気に飲干し強い口調でカウンターに呼び掛ける。


「バーボンロックで!」

「さて、まずは君の名前を教えてくれないか?」

『く、倉木…です。』


まるで子猫が怯えるよな声で呟いた。


「倉木…下は何?」


『――…古都。』


――ガシャンッ。――


俺は持っていたグラスを思わず地面落としてしまった。

古都だって?
バカな…――。


「倉木さん…悪い冗談は止めて貰えないかな?それとも俺をからかってるのか?」

『私、冗談なんか言ってません。』


予期しない彼女の発言に俺は、動揺を隠しきれなかった。
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