最後に初めまして。
15分程歩くと都心の小さな公園があった。

緑は少なく幼児が遊べる遊具が少しある様な小さな公園。

俺はベンチを見付けるとそこにすぐ腰を降ろした。

ここに来るまで無言だった彼女は、半分困ったような仕草で少し離れた所で立っていた。


『隣りで良かったら、どうぞ。座れば?』


彼女はゆっくり俺の隣りに腰を降ろした。

俺の事を知りたいと言った割りには何も話さない。

面倒臭そうだな…。

いつしか俺は少しでも早く終わらせようと思っていた。


「倉木さん?俺の事、知りたいってどう言う意味なの?」

『あの…実は……。』


そう言ったまま彼女はここで話を止めた。


「なら質問の内容を少し変えようか?誰かに頼まれて俺に逢いに来たの?」

『…違います。』

「だったら何で?」

『それは……。』


それっきり彼女は黙ったまま話さなくなった。

俯いてる彼女の顔は良く見えないが、体は小刻みに震えていた。

怯えてるのか?

それとも…。
緊張しているのか?

それにしても自分から飛込んで来て…。

変な女だな。



「俺の事……ね。」


そう切出して、俺は自分の年齢、仕事や身の回りの環境等を一人で黙々と話し始めた。

とにかく俺は、少しでも早くこの面倒臭そうな状態から開放されたかった。
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