最後に初めまして。
頭の中は考える事が多すぎてパンク寸前だった。

初恋と同じ名前の印象的な女性に逢った事がある…いや、話をした事がある?

思い出せない…――。


『ならその8日間を私にください。』

「……はあっ?」


考えてる事が全てぶっ飛んだ。

何を言ってるんだ?

8日間をくれ?


「きみ…――。」

『私、恋愛した事ないんです。好きになった人はいましたけど…。』

「それと俺の8日間とは関係ないだろ?」

『関係あります。私は高瀬さんとその時間を過ごしたいんです。』

「それは君の気持ちだけで、俺の…――。」

『私、遠くに行くので時間がないんです。この街の思い出も何一つ。』


さっきまでの黙り込む彼女とはまるで別人のようでもあり、言葉一つ一つに重みのような物を感じていた。


『何も知らないのなら一緒にいる間に私を見て下さい。その間だけでいいですから。』


真直ぐ見つめるブラウン色の瞳から俺は目を逸した。


「ちょ、ちょっと待ってくれないか。」


俺は頭を整理する為に会話を止めた。
彼女は小さくうなずきまた俺の隣りに座った。

彼女は俺に告白しているのか?

遠くに行くから思い出が欲しい?

何一つ訳の分からない彼女の言葉に、戸惑いながらたった一つだけ、俺には分かっていた事がある。

彼女は真剣なまなざしで話していた事だった。
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