最後に初めまして。
俺の視線を感じたのか彼女はこちらを向き、笑顔を見せた。


『これで契約成立ですね。高瀬さんは好きな食べ物とかあります?』


また突拍子もない事を言い始める。


「契約…ね。一つだけお願いがあるんだけど。」

『はい。なんですか?』

「さん付けは止めてくれないかな?登でいいし、それと敬語もなしで。」

『登…ですか?何か、照れますね。』


彼女はうっすらと頬を染めていた。


『なら私もお願いがあります。』

「なんだい?」

『変だと思うかも知れないけど、私の事…あの、変に詮索しないで欲しいんです。』


そしてまた俯く彼女は何処か寂しげで、俺の立ち入れない壁の様な空気を感じていた。


「いいだろう。古都が嫌がる様な事は聞かない。それでいいかな?」

『はい。ありがとう。』


満面の笑みってこう言う笑顔の事を言うのだろう。
彼女の笑顔を見て俺は思った。


『あっ、猫がいる。』


そう言って彼女は公園にいたノラ猫を見付け、駆寄って行った。

本当に変った彼女だ。
外見からすれば周りはほっとかないはず、でも恋愛経験もないと言う。

そんな彼女が俺に契約と呼び期間限定の恋愛を申込んで来た。

しかもこれから恋愛をする相手に、自分の事は聞くなと言う。

これを変わってると表現しないのであれば何て表現するんだろう。
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