最後に初めまして。
俺は普段誰にも話さない自分の過去を気が付いていたら話出していた。

古都が同じ名前だから?

古都がすぐ遠く離れるから?

いや…。

古都の持つ何処か寂しげで柔らかい雰囲気が俺をそうさせたのかも知れない。


「眺めてた彼女を見つめていたら、向うも気付いて微笑んだんだ。」

『そうなんだ…。』

「今思えば一目惚れってヤツかな…。」


あの気持ち良さそうに眺めている笑みに自然に魅かれてその場で立ちすくんでいた。

その後、学校で見付けてからは目で追うようになっていた。

ただ…――。

学校で見る彼女の微笑みと、あの時の眺める彼女の微笑みは少し違っていた様な気がしていた。

ただ何となく、そんな気がしていた。


「小学校の話だから記憶もあいまいだけどね。」

『きっと、すごく好きだったんだですよね。その子のこと。』

「忘れてたよ、もう。」

『ダメ!ちゃんと覚えてあげてなきゃ。可哀想だと思う。』


古都はいきなり声のトーンをあげたので、俺がびっくりした顔を見せるとまた俯いた。


『だって、思い出って忘れて行くけれど…それってすごく寂しい。思い続ければその人はずっと、思い出の中で生きて行けると思う。』


彼女の言葉に耳を傾けながらまた、煙草に火を点けた。

忘れたい思い出もあるのに、忘れたらダメな思い出もあるのか。
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