最後に初めまして。
俺はいつまでもその光景を眺めていたい気分だったが、時計を見てから古都に声をかけた。


「古都、そろそろ時間だよ。」

『…はい。』


小さく返事をする古都の背中を軽く押しながら促した。


「大通りまで送るよ。」

『大丈夫です。ちゃんと帰れます。』

「こらっ、彼氏の初仕事を奪うんじゃない。それと、また敬語だよ。」

『えへっ。そうです…だね。…あれ?。』

「ぶっ、あはは…言葉変だぞ。」

『あ~ん…緊張してるかのかな?あははっ。』


照れ笑いをする彼女の背中に手を回したまま歩き出した。

行きと違い彼女の歩幅に合わせながらゆっくりと歩く。

大通りに着くと流しのタクシーを止め、古都を座席に座らせ、運転手にお金を渡した。


「これで、彼女の言う所までお願いします。」

『えっ?私、自分で払いますから、大丈夫。』


そう言う古都の頭を俺は軽く触った。


「女の子が細かい事を気にするな。」

『で、でも…。』

「運転手さん、彼女をお願いします。古都…おやすみな。」

『あっ、おやす…―。』


古都の言葉の途中でドアが閉まり、悲しげな顔で俺を見つめていたが、車が動き出すと、笑顔で手を振っていた。

変な女だった…。

でもそんなに悪い気分ではないか…。

俺はヒロの待つバーへ戻った。
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