最後に初めまして。
シャワーを終えた俺はとりあえず着る物を着てから、古都の元へ向った。

いつもは何も着たくないのだが、また悲鳴をあげられたら困るからである。


「お待ち…、おわっ。」


俺の目に飛込んで来たのはお世辞にも美味しそうと言えない程の、少し焦げた目玉焼きと、これまた焦げたトーストだった。

俺の方がまだ上手く作れるぞ…。


『…ごめんね。失敗しちゃいました。』

「みたいだな…。」


普段料理なんてやらないのだろうな。

育ちが良さそうだし…。

ただ…指に巻いてあるばんそうこうが彼女の努力を物語る。

お弁当も朝早くから悪戦苦闘だったのだろう…。

これはあまり期待しない方がいいな。


『ごめんなさい。私、料理上手じゃなくて…。』

「大丈夫だよ。俺と変わんないしな。」

『………本当に?』

「ああ…。ほんと。」

『嘘でもそう言ってくれるのは嬉しい。』

「さて、頂きますか。」


そう言ってイスに腰掛けて、古都の手料理を初めて口にした。

見た目通り美味しいとは言えなかったが、ただ古都の入れたコーヒーだけは、今まで入れてくれた誰よりも美味しかった。


「うん。ご馳走さま。」

『あの…どうでした?』


不安げに見つめる瞳は、正直に答えると今にも大粒の涙がこぼれそうなぐらい潤んでいた。
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