最後に初めまして。
どう答えるか少し迷ったが、これから出来る恋人にも悪いし…。


「そうだな…料理は努力する価値有り。ってとこだな。」

『ですよねぇ?今度特訓しときますぅ。』

「でも、コーヒーは満点だな。美味しいわ。」

『えっ?本当に?やったぁー。』

「入れ慣れてるだろ?」

『はい。お客さんが良く来るから…。』


何故かまた寂しげな表情が読取れたが、すぐ笑顔になった。


『じゃあ、早く行きましょ。』


俺の背中を押しながら早く着替えろと、言うように急かした。


「後向いてな。さっき見ただろ?もう覗くなよ、金取るからな。」


俺が冗談ぽく言うとソファーにあったクッションが飛んで来た。


「痛っ…。」

『――…ばかッ。』


特訓の成果が出たのか知らないが、まるで何年も前から知ってるような振る舞いに、会話もスムーズに弾む。

それは彼女の持つ人なっこさなのか、あどけなさなのか…。

控え目な一面もあり、俺にはそのギャップがいつしか楽しいものになっていた。


『あの…まだです?』

「あいよ、お待ち。」


俺が振返っても古都はまだ後を向いていた。


「さて、お姫様参りましょうか?」

『はい。』


おどけて言う俺の言葉に笑顔で答える古都の腰に腕を回し、俺達は部屋を後にした。
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