最後に初めまして。
遊園地と言うとこの辺りでは隣りの県の港に大きなレジャーランドがある。

車で約1時間半程度のドライブだ。


『わぁー、大きい船。』

『すごいっ、ビルが高くて沢山あるぅ!』

『この車全部遊園地行くのかな?』


古都は一人で子供みたいにはしゃいでいた。

物珍しい物なんて何一つないはずなのに。

それは籠の鳥が外で初めて羽ばたいたかのようにブラウン色の瞳を輝かせていた。

遊園地の駐車場に着くなり古都は、恥ずかしげもなく俺の手を取って、入場門まで走り出した。


「こらっ、そんなに走ると転ぶぞ。逃げやしないから慌てるなよ。」


心境は娘をなだめる父親ってとこだろな。


『だって、早く乗りたいんですぅ。』


入場券売り場で入場券を購入する俺を待ちきれないのか古都が横から言葉をカブせる。

「おと…―。」

『大人二枚です。』


券を貰うや否や、また手を取り走り出す。


『こっちです。こっちぃ、早く行きましょ。』

「そんなに引っ張るなって、分かってるから。」


元気と言うか幼いと言うか…。

大型連休初日という事もあり、行きの道路より遥かに混合っていた。

家族連れや恋人達…。

みんな楽しむ為に来ているのだろうな。

俺は、はしゃぐ小娘のお守りか…。

遊園地の予想以上の混雑が俺の心を凹ませる。
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