最後に初めまして。
そんな俺の思いとは裏腹にあの男は、俺が成長するに連れ暴力も変わるようになっていた。

直接殴るという行為の他に、物を使った暴力や精神的な暴力も増えて来たのだ。

始めは朝食の味噌汁を不味いと言う理由で、その味噌汁を俺にかけたり。

また…

真冬に水をかけられ、外に出され風邪をひき、それでも学校を休むことを許されず、肺炎になり倒れた事もあった。

物を投付けるなんて日常茶飯で、物が当たりまぶたを何針も縫った事もある。

俺が泣き出すと、エスカレートするその行為に涙を堪え、ただじっと終わりを待つしか出来なかった。


いわゆる虐待…――。


今のご時世珍しいことでもない。

俺の幼児期でもそうだったに違いない。

ただ…――。

身体や顔のアザを見ても誰も何も言わなかった。

一度、顔のアザを先生に問われた事がある。

迷ったが、俺は正直に全てを話した。

しかし…、結果は同じで以前とは何一つ変わらなかった。

誰も俺を助けてはくれない。
この地獄のような生活から逃れる術は、この男の死か、俺の死…――。

そう感じていた頃にまた母親も…

その暴力から逃れるために、俺をあの家に捨てていなくなってしまった。


――グシャッ!――


煙草のケースを握り潰した俺は、気持ちを切り替える為、シャワーを浴びに向った。
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