最後に初めまして。
しばらくすると百合さんが呼びに来てくれて、一階のテラスでコーヒーを飲んでいた。


「それにしても素敵な所ですね。ここだけ時間が止まってるみたいだ。」

『気に入って貰えて嬉しいですわ。』

『あの…登、飲んだら少し散歩しない?』

「いいね。行くか。」


俺は白樺の並木道を古都と一緒にに歩いていた。


『綺麗だね。違う世界に来たみたい…。』

「ちゃんと見て歩かな危ないぞ。」

『きゃっ。』

「おっと。」


つまずいて転びそうな古都を支え俺は自然に古都の手を取って歩いていた。


『うぅ…照れます。』

「転ばないのは、これが一番だろ?なんなら…離す?」

『意地悪…。』

「でもこんな所にこれるなんてラッキーだったな。ヒロに感謝だな。」

『はい。すごく幸せで怖いくらいです。』


1時間程歩いたら開けた場所に出た。
一面に綺麗な湖が広がっていた。


『綺麗…すごく綺麗。』


次の瞬間俺の手を離し古都は湖のほとりに駆け出し始めた。

陽射が湖に反射して波打ち際で遊ぶ古都を照らしていた。

古都はきらきらと陽射を浴びて輝いてた。


笑顔も仕草までもが…。それはまるで女神が俺の前に現れたかのような思いでもあった。

しかし時折、その温かな思いとは裏腹に心臓をわしづかみなされような痛みが走っていた。
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