最後に初めまして。
しばらくすると百合さんに抱きかかえられる様に古都が出て来た。


「古都!…ごめん。」


俺の言葉に古都は反応する事なく俯いたままだった。

百合さんが俺にウインクをして二人で後部座席に座った。


『取りあえず戻るか…
なっ、登。行くぞ。』


そう行ってヒロは俺から車の運転席を奪う様に座った。

気を使ってくれる二人の気持ちが痛い程伝わって来たが、俺は古都のこぼれ落ちる涙とすすり泣く声で心と頭の中は生め尽くされていた。

別荘に戻ると古都は部屋にこもってしまった。

百合さんがそばに付いてくれている為、少しは安心出来ていたが…。


『災難やったな。世間は狭いな…気にするな。』

「いや…俺のミスだ。もっと深く考えてさえいれば泣かせずに済んだ。」


俺はさっき車で考えている事をヒロに伝えた。


『なる程ね…。それはお前が悪い。でも古都ちゃんがそれだけの存在なんだろ?』

「ああ…。でもどうする事も出来ないだろ?」


そう言うとヒロも俺も黙ったまま口を開かなくなっていた。

そう…どうしょうもない事なんだ。

俺が古都を愛してしまっても結果は変わらない。最後に傷付くのは古都と俺だけだから…。

古都にはこの気持ちを知られてはいけない。
良き恋人を演じていると思わせて…終わりだ。

ポッ、ポッ…ザーザー…

俺の心と同じで外も土砂降りの雨が落ちて来た。
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