最後に初めまして。
日も暮れて周りに明りが灯る頃、上から百合さんが降りて来た。

俺と目が合うと百合さんは首を横に振っていた。


「すみません…ご迷惑かけてしまって。」

『私は良いんですけど、古都さんが気の毒でしょう?』

「はい…すみません。」

『登さんは古都さんの事愛していらっしゃるものだと思ってましたのに…残念ですわ。』

『登は愛してるんだよ。たぶん過去の恋愛の中で初めてな…。』

『どう言う事ですの?』

『コイツは…――。』


ヒロは昔から俺が本気に彼女を愛さなかった事や古都との期限付くの恋愛と、そして今の俺の気持ちを百合さんに話していた。

俺は窓の外の雨をただ見つめて続けていた。


『最近、自分の世界に入らなくなったな…。そろそろ全部話したらどうだ?お前、俺に色々隠してるだろ?』

「ああ…。いつか、そのうちな。」

『いつも、これだからな…。』

『私、古都さんには全て話さないといけないと思いますわ。それが離れる運命だとしても…。』

「話してどうにかなるのなら話すよ。でも古都は後少ししたら俺の前から姿を消すんだ…。俺の気持ちなんて構わずに…。だったら愛さない方が楽じゃないか?」


俺はいつしか熱く自分の気持ちを語っていた。
後に古都が居る事にも気付かずに…。


『こ、古都さん?』


俺が振返ると古都は走り出した。
雨の中暗闇に姿を消すかの様に…。

俺は無我夢中で雨の中古都の後ろ姿だけを追っていた。
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