最後に初めまして。
俺達は彼女達を誘い奥のボックスへと場所を移し、たわいもない会話を始める。

バーボンの追加が増えると隣りに座った彼女が俺に言う。


『お酒強いのね。さっきから、かなり飲んでるでしょう?』

「俺は飲んでも酔えない質でね。」

『私はすぐ酔っちゃうから、羨ましいわ。』



酒は嫌いじゃないが酒に呑まれるまで、俺は飲まない事にしている。

酒に呑まれて全てを失った母親を見て来たからなのかもしれない。

そんな母親が中学になった俺を迎えに来た。

一緒に住む事に反抗もしたが、あの暴力男よりはましだと思い母親の元で過ごす事に決めた。

その時母親には既に4人目の男がいた。

ここまでくると呆れるより感心してしまう。

ただ今度は人の良さそうな男だった。

俺と住み始めた母親は、毎日酒を飲むと言うより浴びていた。

育児と主婦業を放棄し、朝から晩まで酒と向かい合う日々…。

やがてそんな母親から4人目の男も離れて行った。

一度母親に飲む理由を訪ねたら、妹を引き取れなかったから寂しくて、飲んでいると言っていた。

そばに居る俺じゃなく、離れて暮らす妹を思い泣いている母親に、嫉妬とイラだちで虚しさに包まれていた。


もしかしたら、俺にとっての母親はあの日捨てられたあの時から、何処にも居なかったのかも知れない。
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