最後に初めまして。
穴から出ると雨は降るのを止めていた。

俺は古都の肩を借り道なき道を歩き始めた。


『――…い。の…――るい…――…か。』


とぎれとぎれにヒロの叫び声が聞こえて来た。


「ヒロぉーっ。ここだぁーっ。おーいっ。」

『お前等んなとこで何してんの?』


俺達が夜落ちた崖の上からヒロが顔を出して言うバカぽい問いに無性に腹が立って。


「落ちたんだよ。っうか早く助けに来いよな。」

『お前が付いてるから安心かなってさ。足やったのか?今行くな。』


俺はヒロに支えながら別荘まで戻った。

別荘では瞳を赤くした百合さんが待っていた。

俺達は部屋に戻り百合さんが呼んでくれた医者に見て貰い古都は心配なく俺は全治一週間の捻挫で事なきを得た。


『冷静な登君が落ちて捻挫ねぇ~。』

『それは私をかばってくれたから…。』

『それはこのバカが悪いんだから自業自得。』

「痛ッ。足を叩くな。」

『で、お前等何処で夜を明かしたんだ?』

「いいだろ?無事に帰って来れたんだから。」

『それは…秘密です。えへっ。』


古都はいつもの様に舌を出して照れくさそうにしていた。

四人の間にまた変わらない時間が流れていた。

いや…俺と古都だけは昨日までと違う時間が流れようとしていたのかも知れない。

少なくとも俺の中では今までと違う気持ちが芽生えていたからだ。
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