最後に初めまして。
地獄の日々から開放されて、母親の愛情に満たされると言う甘い考えを打ち砕かれた気分だった。

俺はそんな思いだったのかも知れない。


やがて中学の俺は反抗的になり、飲み潰れる母親を見るのが嫌で毎日家に居る事はなかった。

そんな俺の周りに集まる連中はろくでもなく、世間からは不良と烙印を押された奴等ばかりだった。


毎日をただ楽しく過ごす事にだけ時間を潰す。

周りの迷惑を考えずに自分の事だけを考えて生きている日々。

そんな時に俺はヒロと出逢った。

何故だか理由は分からないが、ヒロとは馬が合いいつも一緒にに行動するようになっていた。

ヒロは親が公務員と言う事もあり、家では普通の息子を演じている。

従って、やんちゃだったが警察にお世話になるような悪さは絶対にしなかった。


その事で俺はある意味ヒロに感謝している。

ヒロと行動を共にしていた俺は、高校にも行けなくなるような醜態をさらさずに済んだからだ。

そして高校、大学とヒロと同じ場所に通い、毎日を同じ時間の中で、過ごして来た。

俺にとってはもう一人の自分様な、かけがえのない存在だ。

但し…――。

地獄の日々を知らないもう一人の自分…。

ヒロとはどんなに喧嘩をしても、またどんなに心を許しても、あの日々の事は言えなかった。

それは母親でさえ、自分が出て行った後の事は聞こうとはしなかった。
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