さよならとその向こう側
実さんの体は動かない。


私を突飛ばしはしなかったけど、抱き締めてもくれない。


唇も固く閉ざされたままだった。





なんとも言えない虚しさが私の心を一杯にして、知らない内に流れた涙が、静かに頬を伝っていた。



「帰ります……送って頂けますか?」


静かに溢れ続ける涙を拭う事も出来ず、そのまま、無理矢理笑顔を作って話かけた。



すると、目を見開いたままの実さんは言った。

「もう、こんな事はやめて下さい。傷付くのは綾さんです。」

……と。


確かに愛情の欠片も感じられない、哀しいキスだった。

でも後悔はしないから。

これは私の決意だから。

絶対に諦めないって。



「実さん、私諦めません。あなたの事誰にも渡しません。
……ここの夜景、とても気に入りました。ですから今度からは、実さんに会いたくなったら大学ではなくこちらに伺います。」



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