さよならとその向こう側
『こんな遅くにごめんなさい。』

『いえ、気にしないで下さい。』


いつも通り応えているつもりだったが、動揺していた。


自分から話かける事が出来なくて"こんな時間に電話をよこすなんて、何か有ったのかもしれない"そう思ったが、上手く口を開く事が出来なかった。



『あの、今からお風呂だったの?水の音がしてるけど。』


『え?…ええ、まあ…。』


突然の綾さんの言葉に驚きを隠せなかった。

なんて間抜けな返事をしてしまったのだろう。


しかも、水の音?

バスルームからの音が、電話の向こうにいる綾さんにも聞こえるのか。


…不味い。

確かにそう思ったのだが、何故かその場から離れようとはしなかった。

出来なかった。


もうこのまま、自分の気持ちをさらけ出して……終わりにしたかったから?


自分でも分からなかった。


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