さよならとその向こう側
だけど胸騒ぎは当たってしまう。
忘れられない人がいて、先程の声の主だと…伝えた。
綾さんは黙ってしまって。
申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
しかし綾さんは、沈黙の後に俺の予想とは違う反応をしたんだ。
『・・・実さんは、その彼女の事忘れられないと言いました。でも、その彼女の方はどうなんですか?実さんの事をまだ愛しているのですか?』
!!
『それは・・・』
上手い返答が出来なかった。
彩夏も愛してくれていると言いたかったが、それを伝えると……愛し合っているのに何故別れたのかを話さなければならない。
つまり、佐和田教授に言われた事を綾さんに話す…。
それは躊躇った。
教授と綾さんの親子関係を壊してしまうのではないか?
彩夏の母親の事、まだ彩夏に確認もしていないのに、第三者に話してしまう訳もいかない。まして簡単に話せる内容ではない。
色々な事が頭を駆け巡って、なんて説明をすればいいのか思い付かなかった。
『実さん?もし、あなたが一方的にその彼女を忘れられないだけなら、私は諦めません。』
『・・・・・・綾さん、でも・・・。』
そして結局、綾さんは俺の話を受け入れてくれなかった。