さよならとその向こう側

「で、話しとは?」


教授は窓の外を見つめたまま、低い声でそう言った。

たった今暖房を入れたばかりの応接室はただでさえ冷えきっていて、私の体を強張らせた。

だが、背筋を伸ばし、私に背を向けたままの教授にはっきりと告げた。


「綾さんとのお付き合いを、解消させて頂きたいのです。」


「綾が、何かしたのかね?」


教授は、こちらを見ないままそう呟く。


「いいえ。原因は私です。やはり、彼女の事が忘れられないんです。」



「では君は、水嶋君とやり直すつもりなのか?」


「はい。」


そう答えてから、かなり長い沈黙が続いた。



自分の中では、大学を辞める決心がついている。


きっと教授はその話を切り出してくるだろうが、何も恐れる事はない。


彩夏の全てを受け入れる覚悟はついているから。




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