さよならとその向こう側
「仕方がない。仕事も、本当は辞めて欲しくないんだが、綾の事を考えると・・・。身勝手だが、どこか別の場所で活躍してくれる事を願うよ。」
「はい。」
正直、この言葉を聞いて胸をなで下ろした。
教授と綾さんを裏切った事で、俺は、全ての”大学”という職場で働く事を出来なくされるのではないかと不安だった。
だが教授は、ここから出て行けば構わないと考えている。
有難かった。
俺自身も、彩夏と二人でこの大学で働き続ける事など気が引けたから、どちらにしても退職をするつもりだった。
彩夏にも辞めて貰うつもりだ。
これで今度こそ、彩夏と二人で一緒に生きていける。
クリスマスイブのこの日。
事態は確実に一歩前進した。
けれど、鞄の中のプレゼントは、まだまだ彩夏に渡す事は出来なかった。