さよならとその向こう側

そして、仕事は定時にきっちり終わり家路に着いた。

今日が年内最後の出勤だったのに、一度も実の姿を見る事が無かった。



「…会いたいな。」


部屋のベッドに転がりながら、小さな溜め息と共に、ぽつりと呟いた。






初めて実が泊まりに来た次の日。

このベッドで過ごした夜の事を思い出して、つい一人で恥ずかしがったり、にやけたりした。


それから、段々部屋の中に実の物が増えていって…。

歯ブラシ、お揃いの箸、マグカップ。

クローゼットの中には部屋着も置いてある。




…最近は、全く出番の無い物達。



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