さよならとその向こう側

なんだか、無性に見てみたくなり、クローゼットから実の部屋着を出した。


ディスカウントストアで買ったスウェットの上下は、去年のこの時期は実の匂いがした。

でも今は…柔軟剤の匂いすら無くなっていて、ひんやり、冷たかった。



「…実。」



見なければ良かった。


持ち主をなくした部屋着は、余計に私の胸を締め付けた。

涙が、溢れて止まらなくなった。



「…会いたい。…会いたいのに。」



抱き締めた部屋着は冷たかったけど、後から後から流れる涙を受け止めてくれた。





――この2ヶ月のもやもやした気持ちも、泣き晴らした事によって整理が出来ていく様に感じた。







そして落ち着きを取り戻した後、決めた。



明日自分から……連絡してみようと。




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