さよならとその向こう側
そんな私の姿を見てか、父は小さな溜息を漏らした。
そして、話始めた。
「…綾、神田君の事だが――。」
「あなた!!何も今日話さなくても!せっかく綾が意識を取り戻してくれたのに…。」
父の言葉を遮ったのはお母さんだった。
目に涙を沢山溜めて、真っ赤な顔で、父を睨んでいるみたいだった。
…ごめんねお母さん。
気を使わせて。
でも、ありがとう。
私も“神田君の事は諦めろ“なんて、聞きたくなかったから――。
例えいつかは聞かなくてはならない話でも、一日でも長く先送りにしておきたかった。