さよならとその向こう側

「せめて、私がこの手紙を見つけていれば――。」


そう考えると、悔しい気持ちで一杯になる。



「彩夏、自分を責めては駄目よ。仕方がなかったのよ……姉さんもお義兄さんももちろん彩夏だって、誰も悪くは無い。私はそう考えているわ。」


涙を零し、私の手を握りながら、叔母さんは言った。



そうだね。


お父さんもお母さんも悪く無いよね。




私はやっぱり、真実を知って良かった。


お父さんもお母さんを愛していたのだと、分かって良かった。


それから、私を大切に育ててくれたと、気が付いて……良かった。



あの頃はまだ子供過ぎて、お父さんの気持ちもお母さんの気持ちも理解出来なかった。


でも……今なら、分かる。

夢を断たれて落ち込む事も、愛しい人を奪われたくないと思う事も、誰でも経験する事かもしれない。


私も、実との事やおばあちゃんの事、未だに受け入れられないし、まだまだ立ち直れないと思う。




確かに、お母さんの行為は許されないけど。


でも、気持ちは理解出来たよ――お母さん。



私は、お母さんの愛したお父さんを、そろそろ許してあげなくちゃね?


そうでしょ?

おばあちゃん。



< 315 / 403 >

この作品をシェア

pagetop