さよならとその向こう側

そして長野に帰る日。



携帯を新しくした。


番号もアドレスも変えた。


私はもう、立ち止まっていたくないから。

前に進みたいから。


本当はちゃんとさよならを伝えるべきかもしれない。

でも、会えば……離れられなくなるから。


新幹線に乗る間際、心の中で話しかけた。




”さよなら、実”


”綾さんと幸せに――”




ドアが閉まり、走り出す新幹線の中……静かに涙が頬を伝った。





< 335 / 403 >

この作品をシェア

pagetop