さよならとその向こう側
「大丈夫ですよ。」

神田さんは微笑んだ。



大丈夫?

それって……。



「綾さんを送っていくだけですし、彼女はそんな事で怒ったりしませんから。

むしろ、夜遅くに教授のお嬢様を一人で帰らしたなんて知ったら怒るかもしれませんが。」


微笑みながらそう話してくれたのは、私に気を使わせない為。

分かってるはずなのに。

"彼女と上手くいっています"

その微笑みが、そう物語っている様で。




「そ…そうですか…彼女さんは寛大ですね……。」




"優しい彼女"とか

"素敵な彼女"とか

もっと言い方があったはずだけど全く頭に浮かんでこなかった。



神田さんに彼女がいて、上手くいってるんだと知って、自分で考えているよりもずっと……とてもショックだった。


こんなに素敵な人だもの、彼女がいるのは当たり前のはず。

だけど、私の誘いに応じてくれたから…私は舞い上がってしまってた。


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