さよならとその向こう側

ガチャッ



夜遅い事もあってか、近所の目を気にしてか、インターホンを鳴らさずに合鍵を使って入って来る。


気付いて慌てて玄関に出迎える私を、実は必ず抱き締める……。


「…彩夏、彩夏愛してる。」


耳元で何度も何度も囁く。

「私も…。」


そう答えながら、胸が締め付けられる。



大好きな人からの愛の告白。

普通ならとても嬉しい事なのに、今の私は違う。

私を見つめる実の瞳が、真剣で、儚げで、今にも消えて無くなりそうな危うさを秘めていて…。


怖くなる…。


目の前にいる実をいつ失うか分からない…恐怖が私を支配して。





私達はいつまで


このままでいるの?


このままでも


いられないの?



< 98 / 403 >

この作品をシェア

pagetop