ブタに真珠
「涼!」

仕事を終え、会社を出た涼をある一人の女性が呼び止めた。

「あ、桜子」

「すぐ近くまで来てたから。この後、暇?食事にでも行かない?」

淡い栗色のロングヘアーが夜風でふわふわと靡き、落ち着いたピンクのスーツはまるで彼女のために作られたかのように似合っている。
顔は人形のように整っている。

涼の恋人、桜子だ。

「もちろん……あ…」

「どうかした?」

返事をしようとした涼の口が止まる。

「…ごめん桜子。今日は無理だ」

「え、何か用でもあるの?」
なま
「うん……」

涼は心底申し訳ないという顔で桜子に謝った。
そんな涼に桜子はふわ、と微笑み「分かった」。

「本当にごめんな」

「いいのよ。押しかけた私もいけなかったわ」

そう言い、桜子はタクシーを捕まえて笑顔で去って行った。

桜子の乗ったタクシーが見えなくなるまで見守った涼は小さく溜め息を吐いた。
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