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「神のお告げはそれだけだ。皆、シルヴァに尊大な励ましをかけてやっておくれ」
そう言うと、長は民に向かい手を合わせ、神殿から姿を消した。
残された民が戸惑いを隠せずにざわめく中、シルヴァは真っ直ぐに神殿を後にした。
◇◆◇◆◇◆◇
「父上、母上……ついに恨みを晴らせる。神は私をお選びくださったそうだ……恐ろしい事など、なにもない」
里の端にある小高い丘の上で、月明かりに照らされた銀色の髪がなびく。
「……やっとだ。イヴが迫害を受けてから、数十世紀もの時が経った……私が、終わらせるのだ。この悲しすぎる歴史を」
シルヴァは、年中欠ける事のない満月を見上げ、目を細めた。
気候の変化に強いイヴでさえ、肌寒い夜だ。細く白い腕を抱え、小さな墓石の前にうずくまる。
震えているのは寒さのせいだと、シルヴァは言い聞かせた。