恋するシステム
「亜紀ぃ、どうしたの、ボーッとして」

「あー、んー、ちょっと外の声聞いてた」

ミナはあたしがアンドロイドって知ってるから

それがどーゆー意味かわかってる。

人間じゃ絶対聞こえないなにかを聞いてたってね。

「なに聞いてたの?」

「うん~、デブ崎とだれかさんの口論?」

「デブ崎と……だぁれ?」

「ちょい待って」


もう一回、聴覚システムを拡張する。

キュウウゥ――!

デブ崎とだれかの声が、また聞こえてきた。

「――ろよ、まったく」

「はーい、すんませんでしたあ」

「よーし、ほれ大竹原、さっさと教室行けよ」

「ほーい、了解っすー」

キュゥゥゥ……

……システム縮小っと。

「あー、なんかオータケハラって人らしいね」

「へ? 大竹原くん?」

「知ってんの?」

ミナは「うん」ってうなずいた。

「珍しい苗字だし、間違いないと思う。となりのクラスだよ。廊下の外、通るんじゃないかな?」

「へー」

なんて相づち打ってる間に

静かな廊下に足音が響き始めた。
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