恋するシステム
制服に着替えて台所に行くと

お母さんが朝ごはんの支度をしてた。

「おはよう亜紀、よく眠れた?」

「眠れた眠れたっ。夢も見ないで、記憶のバックアップできたよ」

個体コードは〝AKI〟だけど

世間じゃ〝山本亜紀〟っていうのが

あたしの名前。

あたし、アンドロイドだけど

それ以前にちゃんと、15歳の乙女なんだ。

「あー、もうお母さんっ」

と、あたしは悲鳴をあげた。

お母さんが用意してくれてるお弁当を指差す。

「エネルギーチューブのデザインまたこれなのっ? あたしやだよぉ、こんなのもうっ」

アンドロイドのあたしは

見た目は完璧に人間の女の子でも

中身はやっぱり機械。

だからご飯なんかも

専用の『燃料』が要るんだ。

あたしは、お母さんが毎日持たせてくれるウィダーインゼリーみたいなお弁当が

ちょっと嫌いだった。

だって、銀色のペットボトルなんだもん。

なんか、かわいくない。
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