恋するシステム
「亜紀は、なにを考えてるの?」

「……ワンコのこと」

「ワンコ? ……あ、ひょっとしてまた捨て犬見つけちゃったのね?」

「うん……」

頭の中の記憶フォルダから、しばワンコの画像を再生する。

実は、しばワンコの動画も撮ってたりするから

あたしのシステムは今、しばワンコ一色だ。

よっこらせと起き上がった私は

カシャン

右耳を後ろにスライドさせた。

あ、今ひいたでしょ!

もう、そーゆーの傷つくなあ。

……まあ、おいといて。

耳をスライドさせて開けた内部から、

ひゅるひゅるとコードを引っ張る。

DVDプレーヤーとかゲームなんかでよくある、

赤とか白とかの端子のやつだ。

それを、テレビに繋ぐ。

キュインキュィン――

動画、再生。

テレビの画面に、段ボールのふちに手をかけたしばワンコが写し出された。

『くぅん』

「あらっ♪」

と、お母さんが黄色い声をあげる。

「かわいい柴犬ねぇ、まだ子犬みたいだし」

「そうなのそうなの」
< 44 / 47 >

この作品をシェア

pagetop