恋するシステム
わざわざしばワンコ動画を見せたのも意味なしかあ……

そう気落ちした、その時だった。

「あら」

お母さんが、部屋の電気が反射するくらい真っ暗い窓を見て

立ち上がった。

窓際に寄って

「降ってきたみたいね」

「えっ」

シャッ

カーテンを、閉めた。

のんびり屋のお母さんと違って、私は気が気じゃなくなる。

「降ってきたって雨が!? ねぇ雨なの!?」

「そうよ、雨。――あ、ワンちゃん、だいじょ」

ぶかしらね

とお母さんが言い終わる前に、

私はコードを抜いて、

シュルルッと頭の中にしまって

駆け出していた。

急いで靴を履き、傘をひっ掴む。

遅れて、お母さんがリビングから飛び出てきた。

「亜紀! どこに行くの!」

「ワンコんとこだよ! 雨で濡れたら風邪引いちゃう……!!」

待ちなさい、亜紀!!

とお母さんが叫んだ声は

乱暴に閉めたドアで、叩き返した。





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