恋するシステム
お父さんは、じゃんっとなにかを取り出した。

それは、微妙に丸っぽい三角で……

肌色で……

「アンドロイド仕様のおっぱいだっ! これで亜紀もAカップから卒業でギゃふッ!?」

「お父さんのっ、バカあ!!」

お父さんに平手打ちを食らわせたあたしは

銀色チューブを手に、台所をあとにした。

学校へ行くために靴を履いていると

お母さんが見送りにきた。

「亜紀、お父さんを許してあげてね?」

と、お母さんは言った。

ちょっと苦笑してる。

そりゃそうだよ。

だって娘の前で、あんな、おっぱいって……

「はあ……」

思わず、溜め息が出てた。

ちらりとお母さんを見る。

お母さんには、普通におっぱいがある。

それは、一度だってお母さんの体から取れたりすることはない。

だけど

あたしは違う。

今の160センチの体だって、お父さんが調整してくれたんだ。

データチップに今までの記憶を移して

そのチップを新しい体に入れて

はい、〝AKI〟の着せ替え完了ってね。

今のボディでいくつ目かなんて、覚えてない。

設計された体なんだよね、これも。

だって、あたし、アンドロイドだし。
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