幼なじみ〜first love〜
心も身体も傷つき癒えぬまま中学時代を過ごした栞。


友達なんていない。
先生なんか信じない。

誰もいない。
自分には誰もいない。


人を信じられなくなった。


傷つくのが怖くて、裏切られるのが怖くて。

だから誰も信じない。




それでも不登校にはならなかった理由があった。




生まれてからずっと、母と二人暮らしだった栞。


本当の父親は生きているのか、死んでいるのか、名前も顔も何も知らずに生きてきた。


栞が中学2年の夏休み、母が再婚をした。


栞は、その義父になった男から性的虐待を受けることになる。




家でも学校でも、自分の居場所なんてない。

栞の心は…壊れていく。




身体に刻み込まれた、父親の痕、見知らぬ男たちにレイプされた痕…その記憶を打ち消すように、栞は数多くの男と身体を重ねるようになる。


自分が傷つかないように、人を傷つけることで自分を守ろうとした。


―――……


「心から栞を想ってくれる男なんて、一人もいなかったの…」




栞は誰かの幸せを壊すことでしか


自分の幸福感を得ることができなくなっていた




「蒼くん…本当はずっとね、誰かに本気で話を聞いて欲しくて…誰かと真剣に言葉を交わしたくて…」




栞は信じられる人が欲しかったんだ。




「…でも誰のどんな言葉も嘘くさくて…いつの間にか自分の言葉さえ偽りになっていった…」




一人は怖くて、信じたいのに信じられなくて。闇から抜け出せなくて。




「そしたら…他人も自分のことも信じられなくて…いつの間にか、他人も自分のことも大嫌いになってた…」




誰かに本気で話を聞いて欲しくて


誰かと真剣に言葉を交わしたくて




それなのに



誰のどんな言葉も嘘くさくて


いつの間にか


自分の言葉さえ心さえ




偽りになってた




それが、栞の本当の心の声だったんだなって思った。
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