幼なじみ〜first love〜
「おま…っ…何言って…」




まさか…おまえ……




「あの夏の終わり、あの海に消えたはずの智也の遺体は、見つかってへん。俺が智也でもおかしくないやろ?」




確かに智也が死んだ所を誰も見てはいない。海に消えて行ったのだと思っている。




「おまえ…智也なのか…?」




ホントに…そうなのか…?




「……俺が…智也になったら…絢音は…元気になるんかいな」




遊也はそう言って、俺に背を向けた。




「んだよ…びっくりさせんなって…」




俺は深く溜息をつく。智也なわけない。明らかに性格が違う。




「もう5年やで?智也が死んでから…何で絢音あんなに不安定やねん…」




「絢音にかまわないでくれよ…頼むから」




「俺には…少しわかんねん。絢音の気持ち…せやから…なんかアイツのこと、ほっとけへんねん」




「おまえ…っ」




「会ったばっかりやけどな…やっぱ双子やなぁ。女の好み似とるみたいやな……」




「なっ…」




「好きになりそうや…絢音のこと…」




一瞬、遊也の姿が、あの時の智也と重なった。




――…“蒼…俺さぁ、絢音が好きなんだ”
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